文芸作品の原題と訳題を比較してみました

文芸作品の原題と訳題を比較してみました

FE新作の2タイトル同時発売のおかげで、向こうしばらくの休日は引きこもりが決定したhiramaです。編み物も続けています。時間が足りない。並行してできればいいのに‥。

さて、翻訳とローカリゼーションの意味をそれぞれ調べてみると、
translation:the activity or process of changing the words of one language into the words in another language that have the same meaning
localization:the process of making a product or service more suitable for a particular country, area, etc
となり、

翻訳:言葉を同じ意味の別言語の言葉に置き換えること
ローカリゼーション:製品やサービスを特定の地域に向けて最適化すること

のような雰囲気になります。

「ローカリゼーション」や「ローカライゼーション」を Google Scholar で調べてみると、最初に登場しているのが 1991 年だったため、比較的最近一般的になってきた用語なのかもしれません。が、歴史が古い文芸や映画の翻訳の世界では、用語こそなくても、近い考え方が以前からあったのではないかなと思います。

映画についてはteraが以前記事にしているので、今回はいくつかの文学作品を対象に、Wikipediaで原題と訳題を比較してみました。



【他言語→日本語】
・Deux Ans de Vacances(仏・1888)
  (→Two Years Vacation(英題))
  →冒険奇談 十五少年(1896)
  →十五少年漂流記(1951)
フランス語はわからないので、参考として英訳も挙げました。英題を直訳すると「2年間の休暇」になります。ところで、「冒険」という言葉は、1896年に翻訳版を出版したときの造語だそうです。へえ!

・Anne of Green Gables(英・1908)
  →赤毛のアン(1952)
原題のGablesとは「切り妻」という意味だそうです。日本では「切り妻」はわかりづらいので、現在の題で落ち着いたのでしょうか。逆に、白人が多いイギリスでは、「赤毛」はインパクトが弱そうだなと思います。


【日本語→英語】
・草枕(1906)
  →The Three-Cornered World(日・1965)
  →Kusamakura(英・2008)
1965年の訳者さんは、訳していて本の主題に近いと感じた部分を切り出したとのことです。

・世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(日・1985)
  →Hard-Boiled Wonderland and the End of the World(英・1991)
記載順が逆になっています。

・蟹工船(日・1929)
  →The Cannery Boat(英・1933)
  →The Factory Ship(英・1973)
  →The Crab Cannery Ship(英・2013)
上の2作品と比べると翻訳版が出るタイミングが早いです。
何度もタイトルが変わり、だんだん原題に近づいてきています。boatからshipに変わっている点も気になります。


--おまけ--
【英語(英)→英語(米)】
・Harry Potter and the Philosopher's Stone(英)
  →Harry Potter and the Sorcerer's Stone(米)
ハリーポッターシリーズはイギリスで発売されました。同じ英語圏のアメリカでは、PhilosopherよりもSorcererのほうがわかりやすいと判断されたとかで、Harry Potter and the Sorcerer's Stoneとして展開されています。これに合わせて映画でも、この単語が出てくるシーンは2パターン撮ったそうです。

【現代語→古代ファンタジー】
古代中国を舞台にした十二国記シリーズという作品があります。このあとがきで、舞台設定の都合上、外来語を使うことができず、『テーブル』→『卓』など用語の選定に苦労したような記述がありました。これは‥ローカライズ‥?


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