「悪文」、書いてませんか?
これはタイトル通り「悪文」について解説した本です。
日本語の文章を読みにくくする要素を事例とともに詳しく説明してくれています。
初版が1960年ですので古典と言ってもいいかもしれませんが、今読んでも役に立つ内容が多く含まれています。
そもそも日本語はルールがあまり厳格ではないため、何をもって悪文とするかは状況や主観による部分もありますが、この本では文章の目的は読み手に意味を伝えることという観点から、「一読してわからないような文章」を悪文としています。
これはテクニカルライティングの目指す方向と同じだと思いますので、技術翻訳に携わる方は一度は目を通しておくことをお勧めします。
実際、「主語と述語との間は、なるべく近くする」や「修飾語のかかっていく先をはっきりさせる」など、テクニカルライティング関係の本なら必ず載っているような項目も含まれます。
巻末に「悪文をさけるための五十か条」として、本書の内容が50個のポイントに整理されています。
- 文章の組み立てに関するもの
- 文の組み立てに関するもの
- 語の選び方に関するもの
- 敬語の使い方に関するもの
50個のポイントが上記4つに分類されていますが、その中でも2つ目の「文の組み立てに関するもの」には、翻訳文でよく見かけるような「悪文」のポイントが含まれますので、特に注意して読んでおくとよいと思います。「文の組み立てに関するもの」から以下にいくつか挙げておきます。
- 文脈のくいちがいを起こさないように注意する。
- 複雑な内容を表す場合、中止法をあまり長く連ねると読みにくくなる。
- いろいろな意味にとれる中止法は使わない。
- いったん中止させたものがどこへつながるかをはっきりさせる。これには句読点のつけ方を工夫する必要がある。
- 主語と述語との照応関係をはっきりさせる。特に、述語を抜かさないようにする。
- 文の途中で主語を変えるときは、その主語を省略してはならない。
- 並列の場合は、何と何が並列するかをはっきりさせる。
- 必要な助詞を落とさない。
- 副詞の呼応を明確にする。
内容はだいたい想像できると思いますので、本書を一読したあとは、この「悪文をさけるための五十か条」をたまに見直すだけでもいいと思います。
事例に古さを感じることもありますが、現在は「悪文」についての類書もいくつかありますので、それらも参考にしながら悪文撲滅運動を推進していきましょう。