書籍紹介「翻訳語成立事情」: 恋愛はいつ生まれた?
「目と目が合った瞬間...」
そういう話ではありません。残暑のせいで頭がやられそうな ito です。
そういう話ではありません。残暑のせいで頭がやられそうな ito です。
最近読んだ翻訳関係の本で面白かったもののご紹介です。
幕末から明治にかけて、それまで日本語になかった概念が外国から流入してきて、それらに対する訳語を作る必要がありました。
本書では、そのような翻訳の過程での苦労や試行錯誤が紹介されています。
IT 翻訳をやっていて、翻訳者が新しい日本語を作るということはほぼ無いと思います。
仮に新しい概念の英語(外国語)があっても、カタカナでそのまま使うか、既存の何かしらの日本語を訳語としてあてることがほとんどではないでしょうか。
ですので、新しい言葉を作るいう過程はたいへん興味深いものでした。
本書では以下の 10 個の言葉が取り上げられています。
個人:individual
近代:modern
美:beauty
恋愛:love
存在:being
自然:nature
権利:right
自由:freedom,liberty
彼、彼女:he,she
これらはすべて、幕末から明治時代にかけて新しく作られた、または、言葉自体は日本語にあったが、別の意味で用いられていたものに新たな意味を持たせた言葉です。
たとえば、「恋愛」という言葉は次のような流れで作られていったそうです。
(「恋愛」という言葉はそれまで日本語になかった)
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「love」の訳語どうしよう。
↓
「恋」や「愛」、「情」、「色」っていう言葉はあるけど、どうもちょっと俗っぽい言葉だし「love」ではないよなぁ。
↓
「love」はもっと高尚な感情であって、「深く魂(ソウル)より愛する」感情だ!
↓
じゃあ「恋愛」っていう言葉作っちゃおう。新しい言葉で高尚っぽいし。
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※かなり噛み砕いてますので、詳細は本書をお読み下さい。
その他の言葉についても同様に、訳語成立に至るまでの紆余曲折やエピソードが、著者の見解を交え紹介されています。
「恋愛」が高尚な意味で使われているかどうかは個人におまかせするとして、
「恋愛」が高尚な意味で使われているかどうかは個人におまかせするとして、
現在の日本語では、上記のどの言葉も日常的に使われていると思います。
普段無意識に使っている日本語を見直してみる一つのきっかけにしようと思います。
翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189) 柳父 章 岩波書店 1982-04-20by G-Tools |