訳文を短く・読みやすく・分かりやすく
学生時代、レポートの文字数を稼ぐために、違う表現にできないか考えたり、文を加えても蛇足にならなそうな所を探したりしたことがありました。しかし翻訳・レビューの仕事に就いてからは、その逆で、文字数を減らせないかと考えることが多くなりました。
たとえばUI翻訳の場合。1 つ前の画面に遷移するボタンのテキストには、次のようなものが考えられます。
[前の画面に戻る](7文字)
[1つ前に戻る](6文字)
[前に戻る](4文字)
[戻る](2文字)
このUIに半角10文字(全角で5文字)までという制限がある場合、上記の中だと4文字の [前に戻る] がおさまりがいいかもしれません。
文章の場合、略語を開いて表記していたり(例: 英「MIT」→日「マサチューセッツ工科大学(MIT)」)、日本語だと長くなる言葉が含まれていたりしないのに、原文と比べて訳文が長いと感じるときは、もっと簡潔にできることが多いです。
短くできそうなところとして、次のようなものがあります。
- 前後の文章とつなげて読んだときに、しつこく感じる言葉が入っている
- 1つの訳文に同じ言葉が繰り返し入っている
- もっと短い言葉で表せるものが入っている ...etc.
たとえば、同じ言葉が主語として繰り返し使われている場合は、すべて訳出しないほうが読みやすくなります。(別の記事「文を切ったりつなげたり」に例文があります。あわせてご覧ください。)
良く見かけるこんな表現も、短くできます。
- 「~においては」→「~では」(例:「この工場においては」→「この工場では」「ここでは」)
- 「~することができます/可能です。」→「~できます。」
- 「という」や「こと」など(「ここで取り上げられている「象」というのは、インド象のことです。」→「ここで取り上げられている「象」はインド象です。」)
短くすることにこだわりすぎて必要な言葉まで省いてしまわないように注意したいものです。