「暗号化」の反対は「復号化」でいいですか?
「『復号化』ではなく『復号』が正しいのではないでしょうか。しかし...」というお話です。
まず、「暗号」は名詞であって、「暗号にする」という動作を表すのが「暗号化」です。一方、「復号」はそれ単体で「暗号化されたものを平文に戻す」という動作を表しますので、「暗号化」と意味的に対になるのは「復号」だと言えそうです。実際には「暗号化」の対義語として「復号化」「復号」のどちらも使用されることがあります。「化」でそろえたほうがしっくりくるからか、印象では前者の方が多そうです。
インターネット上を調べてみると、M社でもG社でもA社でも「暗号化/復号化」の組み合わせで使用しているようですが、「復号」としている場合もあるようで、用語として統一されてない(いなかった)様子も感じられます。
IT関連の用語辞典では「復号」と「復号化」を併記していたり、「復号化」を使用していたりしています。
IPAが実施している情報処理技術者試験の問題では、「暗号化/復号」を使用しているようです(問40参照)。
「暗号」の反対は「平文」であるから「化」でそろえるなら「暗号化/平文化」とすべき、という意見もあるようですが、「平文」に対応するのは厳密には「暗号文」だと思われるので、そうすると「暗号文化/平文化」となって、何か新しい文化の話のようになってしまい、「暗号化/復号化」に取って代わる気がしません。現実的には「暗号化」の対義語として「復号(化)」以外の言葉を今から採用するのは困難だと思いますので、「復号化」か「復号」のどちらかに収束していくのだと思いますが、現在の様子からすると前者になるのでしょうか。
翻訳会社としては、クライアント企業で用語や慣例で決まっていればそれに従いますが、決まっていない場合でも、「暗号化/復号化」がデファクトスタンダードになりつつある中で、「本来は『暗号化/復号』なんです(キリッ!)」と言ったとしても「でも、ウチではあまりそう言いませんよ」と言われてしまうかもしれないし、自分でも理屈では理解していても感覚的にはあまりしっくりきていない状態では、お客様に積極的には提案しづらいものがあります。そうやって世の中の大きな力で言葉が慣用化していくのだなと思いました。
※参考