存在しない問題
テクノロジー分野にかぎらず、a/the problem that doesn't existという言い回しが使われることがあります。Aはproblem that doesn't existを解決(solve、fixなど)しようとするものである、というような文になって、Aなんて最初からいらなかったんだ、という含みがあります。
何かを解決しようとしている感じのものにかぎらず使えるようで、たとえば、いちごと大福は別々に食べた方がおいしい、ということを主張するために、いちご大福 is a solution to a problem that doesn't exist. と述べることができ......るような気がします。なお、例文は著者の見解を反映したものではありません。
ビデオゲーム情報サイトPolygonの記事のタイトルを例に、どう翻訳するかを考えてみましょう。
Adding physical buttons to the iPhone solves a problem that doesn't exist
http://www.polygon.com/2014/1/9/5291914/iphone-physical-buttons-problem-that-doesnt-exist
直訳すると、「iPhoneに物理的なボタンを追加することは、存在しない問題を解決する」となります。「存在しない問題」というフレーズが輸入されてある程度広まるようなことがあればこれでもいいのでしょうけれど、現状はそうなっていないので、何か別の訳を考えた方がよさそうです。
「iPhoneに物理的なボタンを足しても役に立たない」とすると、ちょっと伝わりにくいところが出てきます。というのは、他の多くの場合と同様に、problem that doesn't existという言い回しを持ち出してくるのは、他人の意見や何か存在するものを否定する、という目的が先にあってのことだからです。
というわけで、「iPhoneに物理的なボタンを足す必要がない理由」とか、物理的なボタンがすでにいくつか存在するということをなんとなくほのめかして、「iPhoneの物理的なボタンを増やす必要がない理由」とか、そんなふうに言い換えることになるのかなと思います。あまり大胆に言い換えたくないのであれば、「ありもしない問題」とちょっとひねってやるとうまくいく場合もありそうです。
翻訳する必要に迫られたことがないのに翻訳の仕方を考えてみたということで、この記事自体が存在しない問題を解決しようとするものでした。なんとなく気に入っている表現なので、直訳が広まったら嬉しいかもしれません。