日英ベンチャーキャピタル事情
今さらベンチャーキャピタルについて調べてみました。さて、ベンチャーキャピタルとは何でしょうか。大辞林では、
『有望なベンチャービジネスに対して、株式の取得などによって資金を提供する企業。また、提供される資本。株式公開時に得られるキャピタルゲインの獲得を目的としている。VC』
と定義しています。
へえ、と思った方もいらっしゃるかもしれません。ベンチャーキャピタルには2つの意味があると書いてありますね。しかし、Wikipediaでは、
『ベンチャーキャピタル(venture capital、略称:VC)とは、ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のこと』
となっています。
おかしいな、と思って英語版を見ると、
"Venture capital (VC) is money that is provided to seed early-stage, emerging and emerging growth companies"
だそうで、こっちではお金だといっていて、話が違います。公認会計士の方曰く、
『VCとは、本来、①成長性がある株式非公開の中小企業であるVBに、②株式、転換社債、ワラント債など、エクイティあるいはそれに準ずる形態で供給される資金そのものを意味します。しかし、一般には、我が国においては、投資家よりVCの運用の委託を受けた、あるいは自己資金によりVCへの投資を行う企業、すなわちベンチャーキャピタルカンパニー(Venture Capital Company)がVCと呼ばれており』
とのことです。
たしかにそう呼ばれている気がします。とはいえ、国語辞典を見る習慣のある人や、英語に長けた人は、資金という意味だと思うようで、日本語の文章でも資金の意味で使われることがあるようなのでご注意ください。
前述のとおり、英語では資金という意味で使われます。組織という意味にするには、venture capitalのあとにfirmとかfundとかcompanyとか、組織であることを示す名詞をくっつけるか、venture capitalists(VCs) というようです。venture capitalistとは、と定義を調べると、個人である、と書いてあるものの、複数になると、複数の人というよりは、firmやfundを言い換える、組織として使われている......ように見えます。その辺はあまり区別する意識がないのか、この手の組織は個人の集まりの延長とみなされるのか、どういうことなんでしょうか。不思議です。
辞書でcapitalを引くと、資本という意味では通常不可算で、まとまった額の具体的な金を指すときはa capitalといえる、とあります。capitalsとすると、首都や大文字がたくさんになってしまうのですね。
というわけで、VCsとなっているときは、venture capitalistsの意味で使っているはずです。しかし、Webを検索すると、venture capitalsと書かれている例も多少見つかりました。人によってはそう書いてしまうのか、あるいは言葉遣いがルーズな人か、ノンネイティブのしわざかもしれません。
英語でも日本語でも、使う際には気を付けるべきポイントがあるようです。今までさんざん見聞きしていたはずですけれども、調べてみて初めてわかりました。