1984年の表計算

1984年の表計算

テクノロジー分野のジャーナリストとして有名なSteven Levy氏が1984年に執筆しHarper's Magazineに掲載された『A Spreadsheet Way of Knowledge』が、VisiCalcの発売35周年を記念して、最近人気のmedium.comに転載されていたので、読んでみました。


IBM-PCやApple IIでLotus1-2-3やVisiCalcがどのように使われていたかという話なので、直接的な感慨はさっぱり湧きませんが、30年前の総合誌で表計算ソフトがどう扱われたか、使われている英語の面から少し紹介します。


まず目についたのは、"Bricklin and his classmates would need ledger sheets, often called spreadsheets."という文です。spreadsheetといえば表計算(の表)だと思っていましたが、それ以前に、集計用の表、というような意味で使われていたようです。100年ほど前の辞書にはspreadsheetという単語はないようだったので、わりと最近使われるようになったかと思ったら途端にちょっと違う使い方をされるようになってしまった言葉のようです。ledgerのほうは今に至るまで意味が変わっていない感じがしますが、spreadsheetとledgerが近い意味で使われていた(時期があった)というのは知りませんでした。

column, row, cellといった表計算の用語は30年前から変わっていないようです。それはまあそうかなと思いましたが、"horizontal row" "vertical column"と書いてあるところがあったので、読者が表計算に馴染みがなかったことが窺えます。

表計算の画期的なところとして、あちこち自動的に再計算されるため計算が異常に速く済む、ということと、modelを構築してvariableを調整して"what-if"......と考えることができる、という点が挙げられていました。what-ifとは書いてありましたが、what-if analysisやwhat-if scenariosとは書かれていませんでした。これらの定型表現が出てくるのはもう少し先のことだったようです。

最近の法人向けのソリューションでは、表計算ソフトウェアを使わずにリアルタイムのデータに基づいてwhat-if分析ができます、のように機能をアピールすると思いますが、1984年当時の感覚では、人力(電卓など)の計算に頼らずに日次のデータに基づいてモデルを構築して分析ができます、というのがすごいことだったようです。ただ、今でも素人がお金をかけずに分析しようとすると同じようなやり方になると思いますので、30年経っても表計算の威力はそれほど衰えていない、ともいえそうです。

表計算とはあまり関係ないのですが、最後に紹介したい一節はこちらです。
"Moreover, we are becoming a society of businesspeople. We speak in a jargon derived from the business world ('What's the bottom line on this?')."
30年前になんとかしておいて欲しかったな......と思いつつ、spreadsheetとjargonだらけの仕事に戻ります。

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