音声にする文を翻訳するときに注意したい点

音声にする文を翻訳するときに注意したい点

ビワの実がなっているのを見て、初めて6月を実感します。こんにちは、元千葉県民のhiramaです。

シーブレインでは、Eラーニング用の教材の翻訳も行っています。
Eラーニングの案件では、スライドのノートやアニメーションに音声を組み合わせた形式のファイルを扱う場合があります。このような案件では、翻訳した文章をナレーターの方に読み上げてもらって音声ファイルを作成し、DTPを行ってマルチメディアファイルを納品します。

そこで今回は、音声にする文を翻訳するときに注意したい点について考えてみました。
いずれも、通常の翻訳をするときにも気をつけたほうが良いポイントではないかと思います。

翻訳した文を音声にしたときに違和感を覚えた理由

翻訳やチェックのときには特に違和感を感じなかった文でも、音声を聞きながら原稿を追っていると「!?」となることがあります。
こうなる理由を、個人的な経験を元に2つ考えました。

①勘違いしやすい文を読んだときに、頭の中で情報がぶつかる

文を読み上げると、文の構成やその意図の「正しい」姿がはっきりします。このときに、複数の意味があったり、間違った意味に受け取られてしまったりする文を、たまたま「正しくない」方向に読み取りながら音声を聞くと、目から受け取った情報と耳から受け取った情報とが脳内で不協和音を起こします。

②音声はどんどん流れていくので、立ち止まって考えることが難しい

意味がわかりづらい文があったときに、音声がない場合は、納得するまで読み返すことができます。しかし音声で聞く場合、「あれ?」と思ったときにはもう次の文に進んでいるため、混乱します。

音声にする文を翻訳するときに注意したい点

わかりやすい文、誤解を生まない文を作成するために注意したい点を、4つ挙げてみました。

1. 平仮名の紛らわしい連続

・「この機能を使うと対象のソフトウェアにより多くのリソースを提供できます。」

「により」を目で読んだ場合、ほとんどの人がまず「この番組は、ご覧のスポンサーにより提供しています」のような、動作の主体としての意味を想像するかと思います。
ただしこの例の場合は、そのような意味ではなく、「に」が助詞で、「より」は「多く」にかかっていますね。

→「この機能を使うと対象のソフトウェアに、より多くのリソースを提供できます。」

また一般的に、平仮名が何文字も続くと、読みづらい文になると言われています。

2. 複雑な係り受け

テクニカルライティングではよく言われる内容ですね。
・「ソフトAがウイルスを検知するソフトBを、監視します。」
文としては間違っていないのですが、なんとなく、ソフトAがウイルスを検知するのかな?などと一瞬思ってしまいますね。

→「ウイルスを検知するソフトBを、ソフトAが監視します。」

3. 複数の意味に受け取られる言い回し

・「このファイルは定期的に保存したドキュメントを確認します。」
「定期的に保存した」なのか、「定期的に確認する」のか、理解が難しい文です。

→「このファイルは保存されたドキュメントを定期的に確認します。」

4. 長い熟語

・「重要業績評価指標設定期間」
自分はやたらと熟語を使う傾向にあるのですが、新卒の頃、当時の上司に「これじゃあ中国語だよ」と言われたことがあります。

→「重要業績評価指標の設定期間」

5. 長い文

個人差があるとは思いますが、私は長い文を読むよりも長い文を聞くほうが苦手です。
日本語特有の結論が最後までわからない(述語が最後にくる)構造と関係があるのかなと思いますが、ともかく、長い文は、音声にするともっと長く感じます。


わかりやすい文、と書くのは簡単ですが、なかなか難しいものです。日々精進です。


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