カタカナ語と翻訳語の間

カタカナ語と翻訳語の間

今、Ken Follett の 『The Pillars of the Earth』 という本を読んでいます。
12世紀のイギリスを舞台とした、大聖堂を建設するお話です。
教会関係の建築用語や役職、制度などが詳しく描写されているので、かなり勉強になります。

例えば、建築関係だと以下のような言葉がよく出てきます。
nave:身廊
transept:翼廊
cloister:回廊
aisle:側廊
altar:祭壇
chancel;内陣
crypt:(主に聖堂の)地下室

ふだんあまり教会に縁がないため、訳語を見てもどの部分のことを表しているのかよく分かりません。
そんな時はイラスト付きの辞典などで確認すると理解の手助けになります。
このへん や このへん のサイトのおかげでだいぶ理解が深まりました。

これらキリスト教の教会建築用語は、もちろん元々日本語にはなかったため、明治時代かどこかの段階でそれぞれ訳語を作り出したのだと思います。
(「内陣」は元々神社建築の用語だったものを chancel の訳語にあてたものだそうです)

「身廊」「翼廊」「回廊」などは一見似たような言葉で混乱しそうですが、図と照らし合せて見ると、うまく考えたなあと感心します。

ただ、ふだん教会とあまり接点がない人は、教会が登場する文芸作品や専門書の文脈以外ではほとんど出会わない言葉だとも思います。
だとすると、身廊をネイブ、翼廊をトランセプト、回廊をクロイスター、という訳語にしてしまうのもアリだったのかなあ、などと思って調べてみたら、「トランセプト」 は日本語でも使われているようです。「ネイブ」 と 「クロイスター」 は、私が調べた限りではほとんど使われていないようです。

また、日本語で、納骨堂のことを「クリプタ」と言ったり、「ファサード」という言葉も使われてたりします。

そんなことを考えていたら、翻訳語が作られるかカタカナ語が採用されるかの違いはどのへんにあるのだろう、という疑問が湧いてきました。
・最初に訳した人の影響を引きずるのか
・訳した時代による流行のようなものがあるのか
・ジャンルや対象の性質などによって傾向があるのか
時間を見つけて、他の具体例と合わせて調べてみたいと思います。
詳しい方がいたらぜひ教えて下さい。

子供のころシャーロック・ホームズを読んでいて、「マントルピースって何だ」と思いつつ、何となくマントのようなものを想像していたのを思い出しました。

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