IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (5)
今回は、IT 英日翻訳で気をつけておきたい文体、時制、主語述語について考えてみます。
個人的な意見を書いている部分もありますので、参考程度に読んでください。
3. 文体
3.1 ですます調(敬体文)、である調(常体文)、体言止め(名詞句)
文末の表現には、ですます調、である調、および体言止めがあります。それぞれ次のようになります。
・OS をインストールします(ですます調)
・OS をインストールする (である調)
・OS をインストール (体言止め)
文末の調子でだいぶ印象が変わります。ですます調は柔らかい印象がありますが、である調と体言止めはやや硬い印象になります。
マニュアルでは、本文では「ですます調」を使用しますが、本文以外の箇条書き、図表の説明、見出しやタイトルなどでは「である」調または体言止めを使用することが多いです。それぞれの箇所で表現を統一するようにします。
3.2 「~します」と「~してください」
英文の命令文や依頼文を訳す時に、「~してください」または「~します」のどちらにするか迷ったことがある人は多いと思います。
操作手順の説明では次のように命令文が続くことが多いので、これをすべて「~してください」と訳すとくどい文章になってしまいます。この場合は簡潔に「~します」としたほうがスッキリとして読みやすくなります。
例: Select your machine name from the list presented and press Enter. ... Enter your department, username, and password. From the Windows Start menu, select Control Panel->Add/Remove programs.
表示されたリストからマシン名を選択し、 を押してください。..部署名、ユーザー名、およびパスワードを入力してください。Windows の [スタート] メニューから [すべてのプログラム] ? [プログラムの追加と削除] の順に選択してください。
また、ユーザーへのお願いや注意を記述している場合は、「~ください」を使用すると、効果的に注意を引くことができます。
例: Please contact our support center if it doesn't work well.
正常に機能しない場合は、当社のサポート センターまでお問い合わせください。
Do not use FTP.
FTP を使用しないでください。
このように、「~します」と「~して(しないで)ください」を使い分けると、メリハリのある文章になります。
3.3 能動態と受動態
能動態と受動態については、いろいろな意見があるようです。各社のスタイルガイドを見ても違いがありますが、マニュアルでは基本的に能動態で記述したほうが読みやすくなります。そして、操作説明では、主語がユーザーの場合と機械の場合があって混同しやすいので、ユーザーの行為は能動態で記述し、自動的に行われる機械の動作は受動態で記述すると、視点が統一されてわかりやすい文章になります。
例:× [OK] をクリックすると、設定ファイルを更新します。
○ [OK] をクリックすると、設定ファイルが更新されます。
視点を統一させようとして、操作説明以外の部分 (システムの概要など) でも機械の動作をすべて受動態で翻訳する人もいますが、機械の動作が連続する部分(仕組みの説明など)では、受動態の文が連続して読みにくくなります。「ユーザーが行う行為」と「自動的に機械が行う行為」を混同しやすい箇所で、能動態と受動態を使い分けると、わかりやすくなります。
4. 時制
時制は、英文に合わせるようにします。
意味が全く異なってくることがあるので、時制には気をつけて訳すようにします。
例:Can not open the file.
ファイルを開くことができません。
Could not open the file.
ファイルを開くことができませんでした。
5. 主語と述語
前に文体について書いたので、主語と述語のよくある間違いについてもここで考えてみたいと思います。
5.1 主語と述語を対応させる
主語と述語が対応していない文をよく見かけます。たとえば、次のような文です。
例:The goal of this attack is to force packets to be mistakenly rerouted to a different VLAN.
× この攻撃の目的は、別の VLAN にパケットが誤って送信されるようにします。
○ この攻撃の目的は、別の VLAN にパケットが誤って送信されるようにすることです。
この例文では、主語と述語が対応していないことに簡単に気づくと思いますが、文が長く、複雑な構造になると、主語と述語がねじれてしまうことがよくあります。
翻訳時には気づきにくいので、最後に必ず見直すようにします。また、原文の1文が長い場合は、複数の文に分割して訳すと、主語と述語の関係がわかりやすくなります。
5.2 主語と述語はなるべく近くに置く
主語と述語の位置が離れてしまっているために、文の意味があいまいになったり、本来の意図とは違うように解釈されてしまったりすることがときどきあります。このミスは原文に挿入句が入っている場合に多く見かけます。
主語と述語をなるべく近くに置くと、文章の意味を誤解なく伝えることができます。
5.2 節や句を入れ替えて訳す場合は主語を明確に訳出する
例:Uninstall Linux, if it is installed on the computer.
× それがコンピュータにインストールされている場合は、Linux をアンインストールします。
○ Linux がコンピュータにインストールされている場合は、アンインストールします。
このように書くと簡単なことに思えますが、意外に多いミスの 1 つです。
個人的な意見を書いている部分もありますので、参考程度に読んでください。
3. 文体
3.1 ですます調(敬体文)、である調(常体文)、体言止め(名詞句)
文末の表現には、ですます調、である調、および体言止めがあります。それぞれ次のようになります。
・OS をインストールします(ですます調)
・OS をインストールする (である調)
・OS をインストール (体言止め)
文末の調子でだいぶ印象が変わります。ですます調は柔らかい印象がありますが、である調と体言止めはやや硬い印象になります。
マニュアルでは、本文では「ですます調」を使用しますが、本文以外の箇条書き、図表の説明、見出しやタイトルなどでは「である」調または体言止めを使用することが多いです。それぞれの箇所で表現を統一するようにします。
3.2 「~します」と「~してください」
英文の命令文や依頼文を訳す時に、「~してください」または「~します」のどちらにするか迷ったことがある人は多いと思います。
操作手順の説明では次のように命令文が続くことが多いので、これをすべて「~してください」と訳すとくどい文章になってしまいます。この場合は簡潔に「~します」としたほうがスッキリとして読みやすくなります。
例: Select your machine name from the list presented and press Enter. ... Enter your department, username, and password. From the Windows Start menu, select Control Panel->Add/Remove programs.
表示されたリストからマシン名を選択し、
また、ユーザーへのお願いや注意を記述している場合は、「~ください」を使用すると、効果的に注意を引くことができます。
例: Please contact our support center if it doesn't work well.
正常に機能しない場合は、当社のサポート センターまでお問い合わせください。
Do not use FTP.
FTP を使用しないでください。
このように、「~します」と「~して(しないで)ください」を使い分けると、メリハリのある文章になります。
3.3 能動態と受動態
能動態と受動態については、いろいろな意見があるようです。各社のスタイルガイドを見ても違いがありますが、マニュアルでは基本的に能動態で記述したほうが読みやすくなります。そして、操作説明では、主語がユーザーの場合と機械の場合があって混同しやすいので、ユーザーの行為は能動態で記述し、自動的に行われる機械の動作は受動態で記述すると、視点が統一されてわかりやすい文章になります。
例:× [OK] をクリックすると、設定ファイルを更新します。
○ [OK] をクリックすると、設定ファイルが更新されます。
視点を統一させようとして、操作説明以外の部分 (システムの概要など) でも機械の動作をすべて受動態で翻訳する人もいますが、機械の動作が連続する部分(仕組みの説明など)では、受動態の文が連続して読みにくくなります。「ユーザーが行う行為」と「自動的に機械が行う行為」を混同しやすい箇所で、能動態と受動態を使い分けると、わかりやすくなります。
4. 時制
時制は、英文に合わせるようにします。
意味が全く異なってくることがあるので、時制には気をつけて訳すようにします。
例:Can not open the file.
ファイルを開くことができません。
Could not open the file.
ファイルを開くことができませんでした。
5. 主語と述語
前に文体について書いたので、主語と述語のよくある間違いについてもここで考えてみたいと思います。
5.1 主語と述語を対応させる
主語と述語が対応していない文をよく見かけます。たとえば、次のような文です。
例:The goal of this attack is to force packets to be mistakenly rerouted to a different VLAN.
× この攻撃の目的は、別の VLAN にパケットが誤って送信されるようにします。
○ この攻撃の目的は、別の VLAN にパケットが誤って送信されるようにすることです。
この例文では、主語と述語が対応していないことに簡単に気づくと思いますが、文が長く、複雑な構造になると、主語と述語がねじれてしまうことがよくあります。
翻訳時には気づきにくいので、最後に必ず見直すようにします。また、原文の1文が長い場合は、複数の文に分割して訳すと、主語と述語の関係がわかりやすくなります。
5.2 主語と述語はなるべく近くに置く
主語と述語の位置が離れてしまっているために、文の意味があいまいになったり、本来の意図とは違うように解釈されてしまったりすることがときどきあります。このミスは原文に挿入句が入っている場合に多く見かけます。
主語と述語をなるべく近くに置くと、文章の意味を誤解なく伝えることができます。
5.2 節や句を入れ替えて訳す場合は主語を明確に訳出する
例:Uninstall Linux, if it is installed on the computer.
× それがコンピュータにインストールされている場合は、Linux をアンインストールします。
○ Linux がコンピュータにインストールされている場合は、アンインストールします。
このように書くと簡単なことに思えますが、意外に多いミスの 1 つです。