IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (4)
前回に引き続き、IT 英日翻訳で気をつけておきたい表記について書いていきます。
今回は、グラフィカル ユーザー インターフェイス (GUI)、入力キー、固有名詞、各種記号について考えてみます。
ここではテクニカルライティングでの一般的な注意点についてまとめます。例外もありますのであらかじめご了承ください。
2.6 GUI と入力キー
GUI と 入力キーは、IT 文書に頻繁に記載されるだけでなく、いくつもの方法が考えられるので、翻訳する前に必ずその表記方法を決めておきます。
2.6.1 GUI
メニューやボタンなどの GUI を表記する場合は、それが GUI であることをわかりやすくするために、[] や 「」 などの記号で囲むことがあります。
名称の表記方法にも、英語のみ、日本語のみ、または英語と日本語を併記する場合があります。これは、日本語版の製品の有無などによって異なります。
例: GUI の表記方法
[次へ]
[Next]
[次へ(Next)]
2.6.2 入力キー
GUI と同様に、入力キーの表記方法も次のようにいろいろあります。
例: 入力キーの表記方法
Enter
[Enter]
<Enter>
<Alt> + <Del> (2 つのキーを同時に押す場合の表記)
2.7 固有名詞
2.7.1 人名および社名
人名および社名を表記する場合、次の点についてあらかじめ決めておきます。
・日本語または英語のどちらの表記にするか
・日本語で表記にする場合は、姓と名、または複数の単語の間をどのように区切るか
・敬称「氏」または「社」をつけるか
日本語で表記する場合でも、初出の箇所で英語を併記することがあります。
例:人名の表記方法
Barack Obama氏
バラク オバマ(Barack Obama)氏
バラク・オバマ氏
2.7.2 商標、製品名
商標や製品名は訳しません。原文のまま使用します。
商標には、たいてい ?(trade mark) や ?(registered trade mark)が付いています。訳す時もこれらのマークを付けておきます。初出の箇所のみにマークが付いている場合もあるので、そのときは原文にしたがいます。
製品名や技術名は、通常大文字で記述されているので簡単に識別できますが、大文字と小文字の表記が混在していてわかりにくい場合もあります。迷ったときは、その製品を提供している会社のホームページで確認したり、翻訳の発注者へ問い合わせたりする必要があります。
2.8 記号
よく使用される記号と用途の例を次の一覧に示します。
これらの記号の使用をするかどうか、全角または半角のどちらで使用するかは、発注者が決めます。
例:
2.9 表記のまとめ
産業翻訳をする場合、訳が正しいことはもちろんですが、表記にも気をつける必要があります。これらの表記方法については、発注者から『スタイルガイド』としてあらかじめ指定していただけると翻訳者は助かります。『スタイルガイド』は、表記が統一されるだけでなく、翻訳者が発注者に確認する手間が省けるので、発注者と翻訳者の両方にとってメリットがあります。
複数の会社から翻訳の仕事を受けている翻訳者は、発注者ごとにスタイルガイドが異なるので、混乱することもよくあります。業界全体でこれらの表記規則が統一されると翻訳者としてはうれしいですね。日本翻訳連盟(http://www.jtf.jp/)では、スタイルガイドの標準化について検討しているようですので、今後の動きに期待したいと思います。
翻訳会社への依頼を検討しているお客様へ
(株)シーブレインでは、これらの表記規則を定めた『スタイルガイド』の作成を含む、翻訳事業全般のコンサルティング サービスも行なっています。『スタイルガイド』は、用字、用語の使い方、さまざまな表記方法、文体などについて定めた規定集で、訳文に一貫性を持たせるために必要なドキュメントです。このような規定集を作成する時間がないお客様、または作成方法がわからないお客様は、気軽にご相談ください。
今回は、グラフィカル ユーザー インターフェイス (GUI)、入力キー、固有名詞、各種記号について考えてみます。
ここではテクニカルライティングでの一般的な注意点についてまとめます。例外もありますのであらかじめご了承ください。
2.6 GUI と入力キー
GUI と 入力キーは、IT 文書に頻繁に記載されるだけでなく、いくつもの方法が考えられるので、翻訳する前に必ずその表記方法を決めておきます。
2.6.1 GUI
メニューやボタンなどの GUI を表記する場合は、それが GUI であることをわかりやすくするために、[] や 「」 などの記号で囲むことがあります。
名称の表記方法にも、英語のみ、日本語のみ、または英語と日本語を併記する場合があります。これは、日本語版の製品の有無などによって異なります。
例: GUI の表記方法
[次へ]
[Next]
[次へ(Next)]
2.6.2 入力キー
GUI と同様に、入力キーの表記方法も次のようにいろいろあります。
例: 入力キーの表記方法
Enter
[Enter]
<Enter>
<Alt> + <Del> (2 つのキーを同時に押す場合の表記)
2.7 固有名詞
2.7.1 人名および社名
人名および社名を表記する場合、次の点についてあらかじめ決めておきます。
・日本語または英語のどちらの表記にするか
・日本語で表記にする場合は、姓と名、または複数の単語の間をどのように区切るか
・敬称「氏」または「社」をつけるか
日本語で表記する場合でも、初出の箇所で英語を併記することがあります。
例:人名の表記方法
Barack Obama氏
バラク オバマ(Barack Obama)氏
バラク・オバマ氏
2.7.2 商標、製品名
商標や製品名は訳しません。原文のまま使用します。
商標には、たいてい ?(trade mark) や ?(registered trade mark)が付いています。訳す時もこれらのマークを付けておきます。初出の箇所のみにマークが付いている場合もあるので、そのときは原文にしたがいます。
製品名や技術名は、通常大文字で記述されているので簡単に識別できますが、大文字と小文字の表記が混在していてわかりにくい場合もあります。迷ったときは、その製品を提供している会社のホームページで確認したり、翻訳の発注者へ問い合わせたりする必要があります。
2.8 記号
よく使用される記号と用途の例を次の一覧に示します。
これらの記号の使用をするかどうか、全角または半角のどちらで使用するかは、発注者が決めます。
例:
。 | 句点 | 文の終わりを示す |
、 | 読点 | 文の中で意味の切れ目を表す |
, | カンマ | 数値の3桁ごとの区切りに使う 複数の数値を列挙する場合に区切りとして使う |
. | ピリオド | 小数点として使用する |
~ | 波ダッシュ | 数値などの範囲を示す |
・ | 中点 | 名詞を併記する場合の区切りとして使う カタカナで複合語を表記する場合に区切りとして使う |
- | ハイフン | 郵便番号、住所、電話番号などの区切りとして使う |
、 | 読点 | 文の中で意味の切れ目を表す |
: | コロン | 「例:xxx」や「コマンド:cp file1 file2」などのように、事例や具体例をあげる場合に区切りとして使う |
/ | スラッシュ | 分数を表す ディレクトリ名、URLの区切りとして使う(半角) 名詞を併記する場合に区切りとして使う |
― | ダッシュ | 「日本―中国」のように語句をつなげる場合に使う 長音記号と間違えやすいので使用を避けることもある |
* | アスタリスク | 注意書きや参照などを示す |
「」 | カギ括弧 | 語句の強調や、ドキュメントの節または章のタイトル、Web ページのタイトルなどに使う |
『』 | 二重カギ括弧 | ドキュメントのタイトルなどに使う |
() | 丸括弧 | 文中で補足説明をする場合などに使う |
[] | 角括弧 | ボタン、メニューなどユーザー インターフェイスの名称などに使う |
! | 感嘆符 | 正式のドキュメントでは使用を避けることが多い |
? | 疑問符 | 正式のドキュメントでは使用を避けることが多い |
2.9 表記のまとめ
産業翻訳をする場合、訳が正しいことはもちろんですが、表記にも気をつける必要があります。これらの表記方法については、発注者から『スタイルガイド』としてあらかじめ指定していただけると翻訳者は助かります。『スタイルガイド』は、表記が統一されるだけでなく、翻訳者が発注者に確認する手間が省けるので、発注者と翻訳者の両方にとってメリットがあります。
複数の会社から翻訳の仕事を受けている翻訳者は、発注者ごとにスタイルガイドが異なるので、混乱することもよくあります。業界全体でこれらの表記規則が統一されると翻訳者としてはうれしいですね。日本翻訳連盟(http://www.jtf.jp/)では、スタイルガイドの標準化について検討しているようですので、今後の動きに期待したいと思います。
翻訳会社への依頼を検討しているお客様へ
(株)シーブレインでは、これらの表記規則を定めた『スタイルガイド』の作成を含む、翻訳事業全般のコンサルティング サービスも行なっています。『スタイルガイド』は、用字、用語の使い方、さまざまな表記方法、文体などについて定めた規定集で、訳文に一貫性を持たせるために必要なドキュメントです。このような規定集を作成する時間がないお客様、または作成方法がわからないお客様は、気軽にご相談ください。