Trados Workbench コラム第 4 回

Trados Workbench コラム第 4 回

ここでは、広く使用されている翻訳支援ツール、特に見積りに大きく関わる翻訳メモリ (以下、TM) について紹介いたします。私たちがどのようなものを使用しているかを知ることで、実は翻訳を依頼する側のコスト削減につながります。翻訳を依頼する量、方法、スケジュールも選択肢が増えるのではないでしょうか。


TM の設定内容でコストが変わる! (2/4)

TM の設定には置換の設定のほかにもいろいろあります。今回は、属性値として追加できるフィールドの設定とそのフィールドを使用したフィルタの設定を 2 回に分けて見ていきます。1 回目ではフィールドの機能について理解し、2 回目ではフィールドとフィルタを組み合わせることによってコストにどのように影響するか理解しましょう。今回はフィールドの機能について説明します。この機能は主に翻訳会社で使用する機能ですが、お客様のほうでもこの機能について理解しておくと便利です。


・ フィールドの設定

Trados Workbench には、TM に登録されている訳のステータスなどを管理できる「フィールドの設定」というものがあります。下図はデフォルトの設定画面です。[テキスト フィールド]、[属性フィールド]、[属性値] にはすでに値がいくつか登録されています。



それでは、このデフォルトの値を使用して、どのようにフィールドが機能するのかを見ていきましょう。わかりやすいように、今回もレシピを例にあげます。例えば、レシピ本の第 1 版を翻訳して出版しており、今回そのレシピ本が再編され、新たにいくつかのレシピを追加して第 2 版を出版するとします。このような状況を踏まえて、下記のデフォルトの値を使用してフィールドの機能を見ていきましょう。

属性フィールド: Status
属性値: New、Approved

第 1 版はすでに出版済みであるため、その翻訳はお客様によるレビューも済んでいるため、このような状況では、概ね、第 1 版と同じ文章は前後の流れに合っているかなどをチェックするだけにとどめ、第 2 版の新規または更新箇所の翻訳を詳細にレビューすることになります。そのためには、第 1 版のレビュー済みの翻訳と第 2 版で追加・変更された翻訳とを区別して、どの翻訳をチェックすればよいのかを効率的に見分ける必要があります。そこで、このフィールドの設定を使用して、第 1 版の翻訳の Status には「Approved」を、第 2 版の新規または更新箇所の翻訳には「New」を設定するようにします。

まず、レビュー済みの第 1 版の TM を作成する際に、Status に「Approved」が設定されるようにします。作成した TM では下図のように表示されます。




次に第 2 版の翻訳作業を開始します。翻訳時には、追加・更新した翻訳の Status に「New」が設定されるように TM を設定しておきます。

例えば、第 2 版ではレシピが追加され、前述のセグメント「How to make sponge cake」と似た「How to make chocolate cake」という文が出現した場合、翻訳時には次のように表示されます。




この翻訳を修正して TM に登録すると、第 2 版で追加・更新された翻訳は「New」になるように TM に設定されているため、下図のように Status が「New」で登録されます。第 2 版の新規・更新箇所の翻訳をレビューする際は、この Status を見ると第 1 版の翻訳かどうかが区別できるため、レビュー対象が明確になります。TM を利用して翻訳レビューを行うのは主に翻訳会社ですが、お客様がレビューで TM を使用する場合は、この Status で区別することも可能です。




翻訳会社内でのレビューが終了し、お客様によるレビューも終了したあとに、Status がすべて「Approved」の TM を作成します。

Status のほかにも、独自にフィールドを追加することができます。例えば、製品の複数のバージョンで用語の翻訳が異なるため、バージョンを区別したい(ただしその他の部分は一貫した翻訳を保ちたい)場合には、1 つの TM に登録したほうが良いこともあります。このような場合にフィールドを追加することによって、どのバージョンで使用されていたかを区別することができます。


・ フィールドを設定するデメリット

このフィールド設定は、TM で複数訳文 が許可されている(1 つの原文に複数の訳文を登録可能な)場合にも有用ですが、ほかの設定と連携する部分でもあるため、TM の管理が煩雑になったり、解析結果に影響したりする場合があります。これについては、次回例をあげて説明します。

次回は、TM のフィルタの設定について説明します。フィールドにバージョンを設定し、それを使用してどのようにフィルタを設定できるか、またフィルタを設定すると解析にどのように影響するかについて見ていきましょう。


注) ここでは、英語から日本語への翻訳を中心に書き綴っています。英語から日本語への翻訳以外の場合は該当しないことがあります。

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