Trados Workbench コラム第 3 回

Trados Workbench コラム第 3 回

ここでは、広く使用されている翻訳支援ツール、特に見積りに大きく関わる翻訳メモリ (以下、TM) について紹介いたします。私たちがどのようなものを使用しているかを知ることで、実は翻訳を依頼する側のコスト削減につながります。翻訳を依頼する量、方法、スケジュールも選択肢が増えるのではないでしょうか。


TM の設定内容でコストが変わる! (1/4)

今回からは、解析結果にかかわる TM の設定を確認しながら、その設定がどのようにコストに影響するかをみていきましょう。何を設定できるのかを知っておくと、発注する際に TM の設定を指示したり、プロジェクトごとに TM を管理したりすることが可能になります。

・ 置換の設定

Trados Workbench には、翻訳者の労力を減らすために、いくつかの要素を自動で置き換える機能があります。要素には、数字、頭文字(略語)、日付、時刻、単位、変数があります(下図参照)。これらの要素は、一般に、翻訳不要で原文のものをそのまま使用できることが多いため、このような設定が設けられています。ただし、新規翻訳の場合は置換元の訳文がないため、この自動置換は行われません。




では、この設定がどのように解析結果に影響するかを実際に見てみましょう。まず、TM の設定は、上図のデフォルトの設定を使用します。

たとえば、レシピ本の第 1 版では、グラニュー糖 50g であったところが、改訂版では 100g になったとします。改訂版の翻訳時には、すでに TM に第 1 版の訳文(「グラニュー糖 50g」)が登録されており、Workbench ではこの 100g と 50g を同等のものとして自動的に認識し置換できるため、一般的には、これを 100% マッチとして扱います(下図参照)。



では、この置換の設定を変更するとどうなるでしょうか。
これには単位「g」(グラム)が付いているため、[単位] の自動置換を選択解除します。結果は、下図のように Workbench では 67% マッチ(3 ワード中 2 ワードマッチ)として認識するようになりました。これがそのまま解析結果に反映されます。



この機能は大変便利ですが、デメリットもあります。
たとえば、1 文の中に置換対象が複数ある場合、たとえば、英語と日本語でそれぞれの語順が前後するときに、自動置換が機能しないことがあります。また、バージョンであるにもかかわらず、単位として認識できるような文字が後ろにあると、単なる数値として認識され、コンマ区切りの数値に変換されてしまうこともあります(下図参照)。さらに、100% マッチの翻訳は見直さないという契約の場合は、その部分は翻訳時のチェックの対象にならないため、大きな問題に発展する可能性もあります。


Workbench で 100% マッチとして認識されます。Workbench から TagEditor*1 に訳文を取り込むと、自動的に数値「9080V」にコンマが付加されます。

*1 TagEditor は翻訳者が訳文を編集するエディタで、Workbench と併用します。


このように TM の設定のメリットとデメリットを理解しておくと、翻訳会社に発注する際に、ドキュメントの性質を考えて TM の設定を指示したり、プロジェクトごとに設定を変えるように依頼したりすることも可能になるのではないでしょうか。

当社ではローカリゼーションのコンサルティング業務も行なっていますので、はじめてローカリゼーションを担当される方も安心して当社にお任せください。Workbench の設定について不明な点がございましたら、まずはご相談ください。

翻訳のご依頼やご相談、お待ちしております!

次回は、TM のその他の設定をみていきます。

注) ここでは、英語から日本語への翻訳を中心に書き綴っています。英語から日本語への翻訳以外の場合は該当しないことがあります。

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