多言語化のススメ---その4:多言語の記号(小数点とコンマ)

多言語化のススメ---その4:多言語の記号(小数点とコンマ)

多言語翻訳で気付くのは、記号の使い方が国によって全然違うということです。今回は特に小数点とコンマについて書いていきます。
例えば千五十点三という数字を表記する場合、日本では、

1,050.3

というように、数字の 3 桁ごとにコンマ「,」を入れ、小数点には「.」を使用します。アメリカなどの英語圏でも日本と同じように表記するので、これは全世界共通なんだろうと思ってしまいますが、実はイタリアなどではまったく逆の使い方になります。3 桁ごとの区切りには「.」、小数点には「,」を使います。つまり、イタリアでは先ほどの数字は

1.050,3

となります。

以下に、各言語の表記方法をまとめてみました。なお、同じ言語であっても使用している国によって表記方法が違う場合があるので、その場合はカッコ内に国名を記載してあります。


1,053.3 とする言語
【桁区切りはコンマ、小数点はドット】
日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語(メキシコ、ドミニカ共和国など)
1.050,3 とする言語
【桁区切りはドット、小数点はコンマ】
イタリア語(イタリア)、インドネシア語、ギリシャ語、スペイン語(スペイン、アルゼンチンなど)、ドイツ語(ドイツなど)、ポルトガル語
1'050.3 とする言語
【桁区切りはアポストロフィ、小数点はドット】
イタリア語(スイス)、ドイツ語(スイス)、フランス語(スイス)
1 050,3 とする言語
【桁区切りは空白、小数点はコンマ】
ウクライナ語、スウェーデン語、チェコ語、ノルウェー語、フィンランド語、フランス語(カナダ、フランスなど)、ポーランド語、ロシア語


スイスでは、イタリア語、ドイツ語、フランス語がすべて公用語として使用されていますが、桁区切りはアポストロフィ、小数点はドットで表記するため、同じ言語であってもイタリアで使われるイタリア語やドイツのドイツ語などとは表記が違っています。
メキシコもスペイン語ですがスペインのスペイン語とは異なり、英語と同じ表記になっています。アメリカに近いのでアメリカの影響が強いのかもしれません。

また、たとえ英語で書かれていたとしても油断してはいけません。もともとはドイツ語だった文章を英語に訳している可能性もあります。その場合、文章はすべて英語に直されていても、数字はそのまま放っておかれ、ドイツ語表記のままというケースがあります。

国際商取引で数字の間違いは致命的なミスにもなりかねないので、全世界で統一してもらいたい!とも思うのですが、第 22 回国際度量衡総会の決議(2003 年)では、「3 桁の桁区切りには空白、小数点にはピリオドかコンマのどちらかを使用する」と決定されました。小数点までは決められなかったようです。決まってはもらいたいけど、日本語や英語と違う表記に決まってしまうと混乱してしまいそうですね。


参考:第22回国際度量衡総会決議の決議 10
http://www.intermet.jp/metric/22ndCGPM.pdf

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