翻訳の「コメント」

翻訳の「コメント」

先日、フィンランド映画『旅人は夢を奏でる』を見てきました。ヘルシンキに住む有名ピアニストのもとに、3歳の時に別れた実の父が 35 年ぶりに現れ、2 人は北へ向かって車で旅をすることになります。フィンランドのあちこちに住んでいる家族を 1 人、また 1 人と訪ねていくと、ピアニストの彼が知らなかった事実が・・・というストーリーです。

この映画で、主人公がぽつりと一言「Anteeksi...」という場面があります。英語を話すとき、日本人は「Excuse me.」のつもりでつい「I'm sorry.」と言ってしまいがちですが、フィンランド語は「Anteeksi.」 1 語に「Excuse me.」と「I'm sorry.」の両方の意味があるので、相手を困惑させる心配はなさそうです。

さて。今日は翻訳につきものの「コメント」についての話です。

翻訳するときは、翻訳中に気が付いたことをコメントとして記録します。レビューをするときは、翻訳者のコメントを踏まえてレビューし、クライアントに申し送りする必要のあるものを提出用のコメントシートにまとめます。このコメント、どんな基準でどこまで書くか、難しいなぁと思うことがあります。

【1】いろいろな訳が考えられる用語や定訳が決まっていない用語について、自分が使用した訳語
【2】提供されている資料では訳語が見つからなかった製品名、機能名、UI
【3】原文が間違っていると思われる箇所とその訳、可能な場合は想定される「正しい内容」
【4】参照した資料や Web サイトがある場合は、書籍名や URL など
【5】何を意味しているのかいまいち理解できなかった、または訳がこれでいいのか気になる表現や文章
【6】その他、気が付いたこと

このような基準でコメントをつけているのですが、【5】の『何を意味しているのかいまいち理解できなかった、または訳がこれでいいのか気になる表現や文章』はコメントしづらく思うことがあります。いくつも書いてしまったら、この人の翻訳は怪しいと思われるんじゃないか、と。

しかし、いろいろ調べて日本語の表現を工夫しても腑に落ちないところは、やはりコメントしておいたほうが良いと思います。自分が翻訳する場合は、レビュアーが解決できるかもしれないし、お客様に確認しないと分からないことかもしれないからです。時間をかけすぎず、適切にコメントできるよう、日々考えながら取り組んでいます。



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