FidelityかTransparency か

FidelityかTransparency か

Wikipedia の 「翻訳」 の項目を読んでみました。

日本語ページは残念ながら情報量が多くありませんが、英語ページでは、翻訳の歴史的側面、理論的側面などについてもかなり充実した内容になっています。

私は翻訳の歴史や理論についてアカデミックに系統立てて学んだ訳ではないので、新たな発見がたくさんありました。

以下、興味をそそられた点をいくつか挙げてみたいと思います。
<metaphraseとparaphraseの問題、equivalenceの問題>
metaphrase(直訳)とparaphrase(意訳)、equivalence(等価性)の問題は翻訳者を悩ませるテーマです。これらは、古代ギリシャ・ローマ時代から既に色々なことが語られてきたようです。

<Fidelity(Faithfulness) vs Transparency>
おおまかに言うと以下のような意味になると思います。
Fidelity:原文に対して正確であること
Transparency:訳文を読んだときに、ターゲット言語的に自然であること

これについても何百年も前から論争があり、
17世紀の人が以下のような内容を述べています。
"translations, like women, can be either faithful or beautiful, but not both."
※あくまで引用です。私の個人的な意見ではありませんので悪しからず...

原文に忠実な訳を目指すか、訳文として読みやすいものを目指すか。
ただし、実際は、両者は相互に排他的という訳ではない場合が多いと思います。
文脈や状況に応じて、両側面を勘案しながら、出来る限りfaithfulでtransparentなものを目指す、ということになるでしょうか。

<A competent translator shows the following attributes>
有能な翻訳者が有する特質として以下のものが挙げられています。
(以下、大まかなparaphraseです)
・ソース言語に対する優れた知識(書き言葉、話し言葉ともに)
・ターゲット言語を操る能力
・翻訳対象テキストの内容に精通していること
・2つの言語間の、語源的・慣用的な用法の関連性についての深い理解
・直訳を使う場合、意訳を使う場合を見極めるセンス

<ヨーロッパ以外>
上記の内容は主にヨーロッパで発展してきた内容で、
非ヨーロッパエリアでは、それぞれの地域ごとの特色があったようです。
インドでは、一つの流れとしてadapted translationというのもがあるようです。
これは、訳す際に内容も変えてしまうというもので、
古代インドの叙事詩『ラーマーヤマ』は、インド内の各言語に訳される際、言語ごとにストーリーが変えられ、多くのバージョンが存在するのだそうです。

<その他気になった言葉など>
"A competent translator is not only bilingual but bicultural." (by Mario Pei)


その他にも、Back-translation、Machine translation、分野ごと(Poetry、Sung texts、Religious texts等)の説明についての記述もあります。
翻訳の歴史や理論、周辺エピソードについての取っ掛かりとして、一読してみると面白いかもしれません。

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