Trados Workbench コラム第 2 回
ここでは、広く使用されている翻訳支援ツール、特に見積りに大きく関わる翻訳メモリ (以下、TM) について紹介いたします。私たちがどのようなものを使用しているかを知ることで、実は翻訳を依頼する側のコスト削減につながります。翻訳を依頼する量、方法、スケジュールも選択肢が増えるのではないでしょうか。
ドキュメントの変更率を明確にして賢くコストを削減 (2/2)
前回は TM のメリットについて概要を説明しました。今回は、実際に画面を見ながら、これらのメリットを確認していきましょう。
翻訳するファイルのワード数や一致率を出すことを一般的に「解析」と言います。ここでは広く使われている SDL 社のTrados Wrokbench を使った解析の例を示します。
- 解析画面を見てみよう
下記の画像は、Trados Workbench の解析画面です。画面を開いた直後で、まだ解析をしていないので、赤枠の中はすべて 0 です。
それでは、データがすでに登録されている TM を使用して、HTML ファイル 3 つを解析してみましょう。
解析後、前図の赤枠の部分が次のように変化しました。
使用したTM との一致率 (マッチ率) ごとに解析結果が表示されます。主に使用するのは 「単語」 列に明示されるワード数です。
まず、画面にある用語について少し説明します。
繰り返し
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解析したファイル (ここでは HTML ファイル 3 つ) 内に、同じ分節が繰り返し出現する。
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100%
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解析したファイル内の分節が、TM に登録済みの分節と完全に一致する。
一般に 「100% マッチ」 と言う。
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95%-99%
85%-94%
75%-84%
50%-74%
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解析したファイル内の分節が、TM に登録済みの分節と部分的に一致する。
パーセンテージは登録済みの分節とどの程度一致するかを示す。
一般に 「あいまい一致」または「ファジーマッチ」 と言う。
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不一致
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解析したファイル内のセグメントが、TM に登録済みの分節とまったく一致しないまたは50% 未満。新規に翻訳の必要がある文節。
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合計
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上記の合計。
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このワード数から、翻訳にかかる期間を概算で算出できます。また、このワード数を使用して下記のように単価を設定し、コストを見積もることができます。ここでは、単価は架空の通貨 CB を使用しました。
不一致 (0% マッチ) - 74% マッチのワード数 X 100 CB
75% - 84% マッチのワード数 X 70 CB
85% - 94% マッチのワード数 X 60 CB
95% - 99% マッチのワード数 X 30 CB
100% マッチのワード数 X 5 CB
繰り返しのワード数 X 5 CB
50%-74% マッチは「不一致」と同じ単価で設定してあります。これは、分節内で単語単位でしか一致していないことがほとんどで、ゼロから翻訳するのと変わらないためです。
繰り返しと 100% マッチは、ここでは 5 CB に設定しました。これは、翻訳時に見直す必要がある場合を考慮したためです。たとえば、次のような場合は翻訳時に翻訳者が見直す必要があります。
1. 前後の文脈により、訳文が異なる場合
原文: There is a car coming from there.
訳文: 1. 車が来てるよ!
2. 1 台の車が来ます。
2. ドキュメントでの出現箇所が異なる場合
原文: For example:
訳文: 1. 次のような例があります。
2. 例:
1. は、「For example:」 の後ろで改行して文が続く場合で、2. は 「For example:」 の直後に例が挙げられる場合です(「For example: xxxx@xxx.com」 など)。このほか、同じ文でも章や節のタイトルの場合は体言止めにし、文中の場合は「です・ます調」にするという配慮が必要です。
いかがでしょうか。このように明確にワード数が数値化されるので、実際の作業量に合わせて費用を支払えばよいことになります。
多くの翻訳会社では、このような解析を行っているかと思います。翻訳を依頼する企業の皆様がこのツールをお持ちでない場合でも、翻訳会社がこのような解析を行えるかどうか、まず相談してみてはいかかでしょうか。
単価はさまざまな要因によって異なります。たとえば、「100% マッチの部分はそのまま手を加えないでほしい」、「繰り返しの部分も前後の文に合わせて変更が必要かもしれないから、ちょっと見直してほしい」 など、翻訳の方法によっても異なってきます。
また、翻訳会社は、その経験から、ワード数やドキュメントの内容を確認しておおよその期間を見積もることもできます。文書を翻訳する必要が生じたら、まず翻訳会社に相談してみてください。
翻訳のご依頼やご相談、お待ちしております!
次回は、Trados Workbench をすでにお持ちの皆様向けに、さらに詳しくみていく予定です。
注) ここでは、英語から日本語への翻訳を中心に書き綴っています。英語から日本語への翻訳以外の場合は該当しないことがあります。