Trados Workbench コラム第 1 回

Trados Workbench コラム第 1 回

ここでは、広く使用されている翻訳支援ツール、特に見積りに大きく関わる翻訳メモリ (以下、TM) について紹介いたします。私たちがどのようなものを使用しているかを知ることで、実は翻訳を依頼する側のコスト削減につながります。翻訳を依頼する量、方法、スケジュールも選択肢が増えるのではないでしょうか。


ドキュメントの変更率を明確にして賢くコストを削減 (1/2)

第 1 回は、これから翻訳を依頼しようと計画している企業の皆様、または、今まで翻訳会社に仕事を依頼しているものの、翻訳会社がどのように作業しているのかがわからないという企業の皆様向けに、TM のメリットについてご紹介します。

・TM を使用するメリットを知ろう



「ドキュメントに何度も出てくる同じ文は、一度翻訳すれば良いだけなのに、全ワード数分の翻訳料がかかるの?」
「ここは別のドキュメントと同じ文章が使われているから、翻訳会社には変更された部分だけを抜き出して依頼したほうがいいの?」

このような疑問を持った経験をされたことはありますか。
このような疑問を持ちつつも時間がないために、そのまま依頼していたりしませんか。
または、それで翻訳会社に依頼するのが面倒になり、仕事をすでに大量に抱えているのにもかかわらず、自分で翻訳も行ってしまっていませんか。

これから説明する TMのメリットを理解しておくと、1 ワードに一律の単価を設定してコストを算出する必要がなくなり、前述のような疑問は解消されるのではないかと思います

簡単に言うと、TM とは今まで翻訳した訳文が蓄積されていくデータベースです。そのため、はじめは空の状態です。翻訳を進めていくと、下記のように原文と訳文のセットが追加されていきます。登録されるものは文であったり、語句であったりします。これは一般に 「分節」 と呼ばれます。

原文: There is a car coming.
訳文: 車が来ます。





それでは、前置きはこのくらいにして、本題の TM のメリットの説明に移りましょう。
TM を利用するメリットは主に次の 2 つです。

1. TM に登録済みの訳文を流用して、翻訳期間もコストもカット

前述のように、TM には、翻訳した訳文が蓄積されていくので、同じ文を毎回翻訳する必要がなくなります。たとえば、上記の例の 「There is a car coming.」 と全く同じ文 (分節) が翻訳を進めていくうちに再度出現した場合、すでに登録されている訳文 「車が来ます。」 を変更することなく、そのまま使用できます。さらに翻訳していくと、今度は 「There is a car coming from behind.」という文が出現したとします。このように TM に登録済みの文 (分節) と完全に一致しない場合でも、既存の訳文 「車が来ます。」 を流用し、これに 「後ろから」を追加して 「後ろから車が来ます。」 とすることができます。

このような方法で翻訳を行うと、翻訳期間が短縮され、最終的にはコストの削減にもつながります。

2. TM に登録されている分節との一致率で単価を決定してコストを算出

単純にワード数に一律の単価を乗算してコストを算出している場合は、無駄なコストが発生している可能性があります。Trados Workbench の解析機能を使用すると、ドキュメントの総ワード数だけでなく、ドキュメント内で繰り返し出現するコンテンツのワード数や TM に登録済みの分節との一致率を、ある程度の範囲に分けて明示することができます。そのため、「1 ワードいくら」 という単純な計算ではなく、その一致率の範囲ごとに単価を決めて、コストを算出することができます。
さらに、このワード数から、翻訳会社に依頼する前に、ある程度のコストを把握することができるのではないかと思います。ただし、単価は、ドキュメントの内容などのさまざまな要因によって翻訳会社ごとに異なりますのでご相談ください。

いかがでしょうか。TM にはこのようなメリットがあります。文章から理解するのは少し難しいと思いますので、次回は TM の一致率がどのように活用できるのかを実際に画面を見ながら説明します。

文書翻訳の外部への発注にご興味がある場合は、まずご相談ください。翻訳のご依頼やご相談、お待ちしております!


注) ここでは、英語から日本語への翻訳を中心に書き綴っています。英語から日本語への翻訳以外の場合は該当しないことがあります。

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