1902年のニューヨーク翻訳事情

1902年のニューヨーク翻訳事情

アメリカの昔の新聞を読める『Chronicling America』というサイトを以前ご紹介しましたが、その中で1902年当時のニューヨークの翻訳事情に関する記事を見つけました。1902年2月16日のThe Indianapolis journal紙の記事です。

左から4列目の一番上から始まっています。「translation」という単語をハイライト表示していますのでご確認ください。
当時の翻訳者、翻訳業界についていろいろな切り口で取り上げているので、以下にポイントをいくつか箇条書きで抜き出してみます。

・ニューヨークでかなりの収入(fair income)を得ていた翻訳者は50人ほど
・主なクライアントは輸出入を行っている会社
・そのため、翻訳者は主に出荷、積荷を行うエリアにあるオフィスで働いていた
・アップタウンには、外国の劇や法律文書、文学関連の翻訳を行う翻訳者もいた
・彼らは法外な値段(fancy price)を請求していた
・アメリカ人の翻訳者は少なく、ドイツ人、スペイン人が多かった
・女性は少なかった
・通常のレートは25セント/100ワード(変動あり)
・イタリア語、オランダ語、スカンジナビア系言語のレートは良かった
・フランス語のレートが一番良かった
・ベテランの翻訳者で、1日平均10ドル(ただし波はある)
「fair」や「fancy」が現在と同じようなニュアンスで使用されているか定かではありませんが、文脈的には大きくは違わないように思います。
記事では、その他にも、駆け出しの翻訳者が仕事を得るのに3,000通の手紙やカードなどを企業に送った話や、あるドイツ企業がカタログの翻訳をハーバードの教授に依頼したが、言語的・文法的には正確だったが商品に対する専門知識がなかったためにビジネス文書としては使い物にならなかった話など、翻訳者や翻訳会社のエピソードが取り上げられています。全体でもそれほど長い記事ではないので、一読してみると面白いと思います。
上に挙げた「25セント/100ワード」ですが、現在の価値ではいくらぐらいでしょうか。参考までに、単純に消費者物価指数(CPI)を使って計算してみました。
こちらのページによると、1902年がCPI=26、2014年がCPI=712.5なので、
25セント×(712.5/26)=685.0962セント/100ワード
ということで、現在の価値で6.85セント/ワード

現在のレートの相場については、Proz.comのレート情報を参考にしてみます。
対象言語と方向については記事中に明記されていませんが、仏独西でそれぞれ両方向調べてみると以下の数値です。

感覚的には、「現在の最低レートよりも少し低い」ぐらいでしょうか。

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