IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (3)

IT 産業翻訳のための日本語テクニカル ライティング (3)

前回に引き続き、IT 翻訳で気をつけておきたい表記について書いていきます。
今回は、数字、単位、略称の表記について考えてみます。
ここではテクニカルライティングでの一般的な注意点についてまとめます。例外もありますのであらかじめご了承ください。


2.3 数字の表記
2.3.1 漢数字と算用数字
IT のドキュメントのほとんどは横書きになるので、数字は算用数字を使用しますが、次のように漢数字を使用する場合もあります。
・熟語、慣用句 (例:一石二鳥、第一歩)
・概数 (例:数百ドル、数万件)
・固有名詞 (例:九州、八戸)
・副詞 (例:一斉に)

どちらにするか迷った場合は、その数字をほかの数に置き換えることができるかどうか考えてみます。ほかの数に置き換えられない場合は漢数字を使うようにします。

また、品詞によってどちらを使うか異なる場合もあります。たとえば、「四角形」でも「4角形」でも問題ありませんが、「四角い」(四角い箱など)の場合は漢数字を使用します。

「第1四半期」のように漢数字と算用数字を混ぜて表記する場合もあります。


2.3.2 カンマ
3桁以上の数値は、カンマ(,)で区切って表記します(例:86,200ドル)。
しかし、カンマで区切ってはいけない場合もあるので注意が必要です。
年 (例:2010年)
製品名の一部 (例:Word 2003)

IT 翻訳では、次のものもカンマでは区切らないことが多いです。
ポート番号 (例:ポート番号 8080)
画面の解像度 (例:1280×1024)


2.4 単位の表記
単位は、JIS 規格(JIS Z 8202、JIS Z 8203)で定められたものを使用します。
詳細はここでは省略します。

IT 翻訳で注意が必要なものに、次のものがあります。
・b と B の違い: 小文字の b は「ビット」、大文字の B は「バイト」を表します。
・k と K の違い: 小文字の k は「1,000」、大文字の K は「1,024(2の10乗)」を
表します。
原則として、単位記号の大文字と小文字は使い分けられているので、原文のとおりに表記しますが、原文のライターが大文字と小文字を区別せずに使用しているドキュメントも多く見かけます。


2.5 略称
IT では略称が多く使用されます。略称を使用する場合は、文書内ではじめてその略称を使用するときに略称とその正式名称を併記し、2回目以降は略称のみを表記することが多いです。略称の扱いや表記方法は発注者によって異なります。

略称の表記方法や、略称と正式名称を併記する方法をあらかじめ決めておくと、統一感のある文書に仕上がります。

例:略称と正式名称の併記のしかた
1. 略称(正式名称(和名)) (例:TCO(総所有コスト))
2. 正式名称(和名)(略称) (例:総所有コスト(TCO))
3. 略称(正式名称(英名)) (例:TCO(Total Cost of Ownership))
4. 略称(正式名称(英名):正式名称(和名)) (例:TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト))


「CPU」 のように略称での表記が定着している場合は、正式名称を併記することは少ないです。

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